デストロイガンダム整備班の朝は早い。
「まぁ好きではじめた仕事ですから」
「やっぱり一番うれしいのはネオさんからの感謝の手紙ね、この仕事やっててよかったなと」
今日は納品日 彼はデストロイをワゴンに詰め、ファントムペインへと向かった。
「やっぱ冬の仕事はキツイね、愚痴ってもしかたないんだけどさ(笑)」
「でも自分が選んだ道だからね。後悔はしてないよ」
「この仕事を始めたばっかの時は何度も親父さんに殴られてたよ。でもあの厳しい指導があったからこそ今の自分がいるんだと思うんだよ(笑)」
ここ数年は、安価なオーブ製に押されていると言う。
「いや、ボクは続けますよ。待ってる人がいますから───」
下町MS製造所の灯火は弱い。
だが、まだ輝いている。
「時々ね、わざわざ手紙までくれる人もいるんですよ またお願いしますって。なんか黒い猫抱いて蒼い唇の人から。ちょっと嬉しいですね」
「遠くからわざわざ求めてこられるお客さんが何人もいる。体が続く限り続けようと思っとります」
職人「こう・・・一人で仕事部屋に篭って徹底的にデストロイと向き合ってるとピリッと体が引き締まる思いなんです。
やはり、もともと大量殺戮に使う道具なのでいい加減なことはできないですね」
「やっぱりアレですね、たいていの若い人はすぐやめちゃうんですよ。
変形したほうが早いとか、ストライカーパックがあるからいいとか……
でもそれを乗り越える奴もたまにいますよ。
ほら、そこにいる斉藤もそう。
そういう奴が、これからのMS界を引っ張っていくと思うんですね」
「一度やめようかと思ったこともあるんです。でもね、戦中で若者がのっているムラサメを見たとき、あんなんじゃだめだ!俺ならもっといいものを作れるっ!ってやっぱりこのみちにもどって来ちゃったんです。あの成年のおかげです。」
まだ需要がある、それだけで匠は頑張れると言う。
「この歳でこの商売ってのも、世間様から見ればおかしいんでしょうがね。私は続けますよ」
「本物・・・本物をね・・・伝えたい」
彼は作業の最中、そう呟いた、その小さな呟きこそ現代の連邦に失われつつあるものではないか
司会「これが職人が作ったデストロイガンダムです」
若手「うわーおおきーい。よく変形するし、命中精度が違いますね」
中尾「やっぱりね、材料が違うんだよ。あれ入れるとグンと精度があがる」
Q.「どうですか?弟子入りしてみて」
A.「辛いですね、毎日…でも快感って、その裏側にあると思うんですよ」
今、彼は新しいMSの開発をしている。より強く、より格好いいMS
「自分の作ったザムザザーに息子達が搭乗する・・・それがこの仕事を始めた頃の夢だったんだけどね」
職人は淋しそうに笑った
デストロイ愛用者のステラさん。職人の作品の愛用者の一人です。
「あのね…乗ったら……(大量生産品とは)違うって……分かったの……」
「俺(暫定主人公)とデストロイ、どっちが大事なんだよ!?」…痛烈な一言だった。
彼の作業所の玄関先には、大きな桜の木が立っている。今はもう満開。新入隊の出会いのシーズンだ。
「でも、出会いの無い人達(エクステンディッド)だっていると思うんですよ。
そんな人達に、僕の子供達(デストロイ)と出会って欲しい」
彼は満面の笑みでそう語り、作業所へと戻った。
彼の作るデストロイは漆黒色。何人と出会い、何人虐殺するのだろうか────
「昔はオーストラリア製の質実剛健なハイペリオンに随分押されたりもしたのですが結局は勝ちましたよ。
今は安いオーブ製に押されてますけど、いずれまた勝たせてもらいますよ」
と職人は力強く語る。MS国際化の流れのなかにあって職人同士の熱い戦いは国際的なものへと発展し、次の世代から次の世代へと受け継がれていく
今日も、彼は素材を練り続ける。(コーディネーター増加で)少子化が問題となる昨今では、一部団体(ブルーコスモス)からの風当たりも強い。しかし彼は語る。
「肉体を強化する。これは必要な事なんだ。人が、皆強い訳じゃない」
職人とは 夢を追い続ける者である 彼は、自らの夢を追い続ける…
司会「いや〜本当すごいですね」
若手「デストロイってこんなに手間かけてるんですね」
今日も彼は、日が昇るよりも早く生地の整形を始めた 明日も、明後日もその姿は変わらないだろう
そう、デストロイ整備班の朝は早い───
――完