夢枕調メイド


メイドと云う立場であればよかったのだ。


メイドであると云う事。
それは私の生きてきた証である。
メイドとは職業ではない。
メイドとは生き方であり、スタイルである。
そう信じて今まで生きてきた。
それ以外の生き方を思いつかなかった。


それが、揺れた―――――
我がマスターのたった一言によって揺れた。
メイド、ではなく私の女としての魂を揺さぶったのだ。
だが、不思議と嫌な気はしない、
むしろ清清しい気に満たされていた。
これが愛というならば、おそらくはそうであろうし、
これが愛ではない、とすればおそらくは愛ではないのであろう。
考えれば考えるほど何か奥深いところにまで落ち込んでいくようである。
だが、それでいいような気がした。
よくわからないならば、よくわからないままでいい。
この、よくわからないそのままの姿が私なのだ。
ならばそのままでいい。


あるがままの私でぶつかる―――
それでいい。


ジャッ
カーテンを開く音が響いた。