十波 由真編


「夢を聞かせてみろ。
 俺なら…何かアドバイスしてやれるかもしれない。」



「……そうね。
 だけど、失敗するかもしれない。
 そんなあやふやな夢に、私の将来を賭ける気はないわ!!
 未来のために、
 いろんな希望を犠牲にして、ここまでやってきたんだもの!!



 おじいちゃんが示したこの道は、待ちに待った最高のゴールなのよ!!
 この道を選ぶのがベストのチョイスよ!!



 妥協だと思う?
 だけど、手頃だ安易だなどと言ってるだけでは、何も変わらない。



 目の前に敷かれたレールに跳び乗って、用意された道を進まなければ。
 私はそれに乗るの。」



「待ちに待った最高のゴールだと……?
 勘違いすんなよ、あがらいもがき続けた奴がゴールに辿り着けるんだぜ!



 ―――確かにお前は、
 なれる自分に安易にならぬよう身を粉にしてきただろうし
 今もそうなんだろうよ。
 ―――しかし、



 お前のゴールは、お前の妥協をごまかすための道具じゃねえ。



 人間は、無限に自分をごまかせる。



 目的のための手段と言って、気づかぬうちに自分に甘くなる。
 いずれ、過去の夢すらいい思い出だとするようになる。



 ミイラ取りは、そうやってミイラになる。」