『最悪だな……』
…キュリオとの対決はすぐそこだというのに
…まー姉も里佳子もダメ…！
……ということは
明日香ちゃん―――
かすりさん―――
この二人も厳しいな
へたをするとオレと由飛くんだけで
キュリオと闘わなきゃいけない…！
由飛くんはまだ新人だ……
実質オレ一人でキュリオの最強メンツ
５人を殺(と)らなきゃならねぇ…！
ブリックモールのメイド喫茶が東と西に分かれての利権争い…
東西戦は…
各陣営が５人ずつ従業員を出して行われる
しかし…
ファミーユの陣営は対戦前夜に二人しかいない―――
仁と由飛の二人だけ
夏海里伽子―――
杉澤恵麻―――
涼波かすり―――
雪乃明日香―――
結局誰一人連れてくることは出来なかった………
『フフ…
……さすがにここまでひでぇザマになるとは思わなかったよ』
『で……どうするの店長…？
キュリオにもう少し猶予をくれるよう掛け合ってみます…？』
『いや…あても無いのにそんなことしても仕方ない。
オレと由飛くんでいけるとこまでいこう』
『ごめんなさい…
せめて私が誰か一緒に働いてくれる娘連れてこられればよかったんですが…』
『由飛くんのせいじゃない…
今回人が集まらなかったのは…
オレだ……
オレの店に魅力がなかったんだ。
オレに人望があれば…
自然と人は集まってきたはずさ……
つまり器量の問題だ…
今回の人集めは勝負が始まる前の……
ハイパイに似ている……
それもオーラスのハイパイだ。
オーラスでハイパイが配られた時…
逆転の手が入るか…？
ゴミ手か…？
どんな手が入るかなんて…
そんなもの偶然だ 運だと言う奴もいる…
……しかし オレはそうは思わねぇ……
もし…本気でそんな風に思っている奴は…
時間のムダだからさっさと経営者をやめた方がいい…
オレはそういう土壇場でいい人材が確保できるのが……
それが実力だと思っている。
南ラスでゴミ手がくる奴なんて 所詮ゴミなんだ……
それがその経営者の器量ってもんさ………
だから今回のファミーユ側メンツ、
由飛くんとオレだけという惨たんたる結果は
全て…オレのその経営者の器量ってことに帰結する……』
……二流の器だった……
『たぶん……キュリオのメンバーはそうそうたるものだろう…
それが…キュリオというブランドが背景にあろうと………
板橋店長の力であることに変わりはない。
板橋店長にはその器量があり……
オレにはなかった……
残念ながらな……』
コンコンッ…
『誰だい……？』
まだ仁も
誰も知らなかった
このノックが奇跡の夜の幕開けであることを―――
『誰だってんだよ……
……………
なんだよ……こんな夜中に
あまりふざけてるとケガするぞ』
ガチャ
！
夏海里伽子―――
『やっ
お久しぶり……仁…』
『り、里伽子！お前今までどこに？
探したんだぞ！』
『…ちょっと、ね…
ところで…仁……
……なんか…キュリオと一戦交えるそうね？』
『あ…あぁ……』
『……そう
ファミーユのメンツ………
席は空けてあるんでしょうね……』
『当然だろ…！
今まで散々探したんだぞ…！』
『これで従業員枠５人のところ、
里伽子を加えて３人…！
キュリオに一泡ふかせられるっ！』
『ちょっと待って……私は入らないわよ』
『え？』
『……それになにその５人中３人ていうのは？』
『それが……あてにしてたみんなにことごとくふられちゃって………
５人必要なのにまだオレと風美くんだけなんだ…』
『それはまたひどいコマ不足ね…』
『………』
『入らないわよ』
『…………』
『…入らないから』
『……………』
『もう……しょうがないなぁ、仁は…』
『え、じゃあ…』
『入らないわよ、でもそれはある意味ちょうどよかったわ』
『え？』
『みんな…！入ってきていいわよ』
涼波かすり―――
雪乃明日香―――
『…腕は確かよ』
『おいっ！おいっ！なんてこったっ!』
『この二人…文句ないわね……！』
『あるわけないだろっ！最高だ！！』
……これで４人…！
『最後にもう一人よ……
…随分グダグダごねたらしいけどやると決めたそうよ…
どうぞ……』
『まー姉ちゃん…っ！』
『…………
老兵は死なず…消え去るのみ…なんて…
恥ずかしいこと言っちゃったわね…
老兵は死ぬわ……！
私は死ぬまでパティシエール……
ちゃちな保険の外交員で生き延びても仕方ないわね…！』
『まー姉……』
『５人！』
『すごい……』
『最高のメンバーだねぇ、仁くん』
『これでキュリオにも負けないよ、てんちょ！』
『………仁…今どんな気分……？』
『どんなっ……て………』
くそみてぇなハイパイだったのに……
ほんの４〜５巡で役満張ったような気分だよ………！
