行列のできるツンデレ眼科

カランカラン


『こんにちわー、ってなによアナタか…、また来たの……?
今こんでるから邪魔にならないところでうろちょろしないで待ってて頂戴!』


(なぜか優先的に早く呼ばれる)


『はい、じゃあ左眼隠して指標見て、急いでるから早く』


『これは…右、これは…左、もう、さっきからそんな眼でジロジロ見ないでよ』


見えないから眼を細めている、と言うとボッと赤面して


『もう!そう云う事はもっと早く言ってよ!なによ、バカみたいじゃない、私……』


度数合わせしながら


『ねぇ…ウチで検査終わっちゃったら……もう……来ないの?』


そのつもりだ、と患者。


『……!そ、そう。ふーん、そうなんだ。せいせいするわ! ……ばかぁ!』


仮枠をポコポコと投げられる。会計終わって処方箋受け取る。


『…ハイ、この処方でメガネ作ったらよく見えるようになるから…(しょぼんとしながら)』


ありがとう、と礼を言うと


『バカね…これが私の仕事なんだから…礼なんて言わないで。
 それにここを離れたらあなたと私は違う世界に生きる者同士なんだから…
 もぅ……来ちゃダメだから、ね……ッ!』


玄関から一歩、二歩、三歩、と離れる患者、その足が急に止まり再び玄関に向かって進んでくる。
ガチャンと閉ざされるドア。


『先生、先生!』


勢いよく叩かれるドア、だがそのドアは女医により閉ざされていた。


『来ないで!もう……来ないでょ……来たら…もうあなたを離したくなくなっちゃう…』
『先生、俺、また来るから!メガネ作ったらまた持ってくるから!』
『え、それって……なんで…』
『なんでって。決まってるじゃないか!』


俯いていた女医がハッと顔を上げ患者をじっと見つめる。


『処方度数とあってるか確かめるから持って来いって…書いてあるし』


『バカァ!』


患者の胸に泣きながら飛び込む女医、そして抱擁。